COLUMN見積・打ち合わせ・業務効率化

工務店のExcel見積の限界と切り替えの判断基準|続けた場合の手間の試算と移行の手順

そのExcel見積、限界のサインが出ていませんか?

見積作成にExcelを使っている工務店・住宅会社は少なくありません。自社でひな型を用意すれば追加の費用をかけずに運用でき、自由に作り込める定番の道具です。

しかし、棟数が増えたり仕様の変更が重なったりすると、手作業での更新や版の管理に限界を感じる場面が増えてきます。本記事では、Excel見積の限界を整理したうえで、Excelのままでできる改善、システムに切り替えるべきサイン、続けた場合の手間の試算、見積書の電子データの保存の注意点、移行の手順までを、新築住宅の見積業務に沿って解説します。

工務店でExcel見積が使われ続ける理由

新築住宅の見積は、会社ごとに仕様や単価の体系が異なるため、既製のシステムでは個別の事情に合わせきれない面がありました。その点、自社で自由に作り込めるExcelは相性が良く、次のような利点から長く使われてきました。

  • 標準仕様と単価の一覧を自社の体系どおりに作れる
  • 担当者が使い慣れた書式で作成できる
  • 関数やマクロで計算の仕組みを組み込める
  • すでに持っているソフトで始められる

一方で、社内にひな型があっても担当者ごとに派生したファイルが生まれ、最新版が分からなくなる事態は珍しくありません。見積とひもづく仕様書・提案書・議事録が別のファイルで管理されていると、変更のたびに複数の書類を個別に直す手間も増えていきます。

Excel見積の4つの限界

Excelそのものが悪いわけではありません。複数人が関わり、頻繁に変更され、ほかの書類と連動する見積業務に対して、表計算ソフトのつくりがかみ合わない部分がある、ということです。代表的な限界を4つ挙げます。

版の管理が難しい

ファイル名に日付や「最新」「確定」を付けて運用しても、「いつ・何が・どう変わったか」を後から追うのは困難です。「_最新.xlsx」「_確定.xlsx」「_修正版2.xlsx」と似た名前が並び、施主様に示した版と社内で編集中の版が分かれると、どれを正とするかで混乱が起きます。

同時編集と情報共有に制約がある

クラウドでの共有を使えば同時編集はできますが、関数やマクロを多用した見積ファイルでは書式崩れや編集の競合が起きやすく、制約は残ります。営業・設計・インテリアコーディネーターが同じ案件を扱うと、メールやチャットでファイルを送り合う運用になり、最新版の所在が分からなくなりがちです。

見積とほかの書類が連動しない

見積書で仕様を変えても、提案書・仕様書・議事録は別のファイルのため、一つずつ手作業で直さなければなりません。直し漏れがあれば金額と仕様の食い違いが生まれ、後日のトラブルや手戻りの原因になります。

作った人にしか分からなくなる

Excelは自由度が高い分、担当者ごとに独自の書式や計算の仕組みを組み込みやすい道具です。作成者以外には前提が読み取りにくく、退職や異動で作成者が離れると、誰も手を入れられないファイルが残ります。

Excelのままでできる改善

システムを検討する前に、Excelのままで直せることも多くあります。次の改善で困りごとが解消するなら、急いで切り替える必要はありません。

困りごとExcelのままでできる改善
単価が担当者ごとに違う単価の一覧を1つのファイルにまとめ、見積からはそこを参照するだけにする
最新版が分からないファイル名の付け方と保存場所を1つに決め、施主様に渡した版は別の場所に保管する
入力ミスが多い入力欄を選択式にし、計算式のセルは編集できないようにする
書式がばらばらひな型を1つに決め、担当者が書式を変えない運用にする
過去の案件を探せない案件ごとのフォルダと、案件名・日付・金額の一覧表を作る

これらを整えても、仕様書や提案書との連動、施主様との共有、変更の履歴といった部分は手作業のまま残ります。改善しきれない部分が業務の中心にあるなら、それがシステムを検討する理由になります。標準仕様と単価の一覧の整え方は、新築住宅の標準仕様とオプションの決め方で解説しています。

システムに切り替えるべき5つのサイン

次のサインに当てはまる項目が多いほど、Excelでの運用が限界に近づいています。

図1 Excel見積からの切り替えを考える5つのサイン
サイン1最新版を探すのに時間がかかっている
サイン2仕様の変更のたびに複数の書類を作り直している
サイン3担当者によって見積の精度にばらつきがある
サイン4過去の案件の単価や仕様を参照しづらい
サイン5棟数が担当者の処理できる量を超えつつある

当てはまる項目が多いほど、切り替えを考える時期

サイン1 最新版を探すのに時間がかかっている。「この案件の最新の見積はどれか」「どれが施主様に渡した版か」という確認が日常になっている状態です。誤って古い版から再見積を作るミスも起きやすくなります。

サイン2 仕様の変更のたびに複数の書類を作り直している。見積書・提案資料・仕様書を毎回手作業で直していると、変更1件あたりの手間が積み上がり、直し漏れによる金額と仕様の食い違いも生じやすくなります。変更のたびにそろえる情報は新築住宅の追加変更工事の進め方で整理しています。

サイン3 担当者によって見積の精度にばらつきがある。ひな型を共通にしたつもりでも、各自が派生ファイルを作り替えていると、書式・記載の粒度・単価が少しずつずれていきます。担当者によって説明が変わると、施主様の不信感につながります。

サイン4 過去の案件の単価や仕様を参照しづらい。似た案件を参考にしたくても、どのファイルにあるかを探すだけで時間が取られるなら、会社の知見が貯まっていない状態です。

サイン5 棟数が担当者の処理できる量を超えつつある。反響や商談は増えているのに見積の作成が追いつかず、提案が遅れる状況は、個人の頑張りでは解消しにくい局面です。

Excelを続けた場合の手間を試算する

切り替えを判断するときは、システムの費用だけでなく、Excelを続けた場合にかかっている手間も数字にします。見積の作成と修正にかかった時間を、1棟あたりで数週間ほど記録すると実態が見えます。

作業1棟あたりの時間(記入例)
最初の見積の作成4時間
仕様の変更に伴う見積の修正(回数×1回の時間)6回×1時間=6時間
仕様書・提案書への転記と確認3時間
最新版の確認、社内外への送付1時間
合計14時間

この例で年間40棟なら、見積まわりに560時間を使っている計算になります。数字は会社によって大きく違うので、必ず自社の記録で計算してください。システムで減らせるのは主に修正と転記の時間で、最初の作成の時間がどこまで減るかは、標準仕様と単価をどれだけ事前に登録できるかで決まります。仕様決めの打ち合わせそのものを短くする取り組みは、工務店・住宅会社の業務効率化で紹介しています。

見積書を電子データで送るときの保存

ExcelやPDFの見積書をメールで送っている場合は、電子帳簿保存法にも注意が必要です。国税庁のリーフレット「電子取引データ」では、請求書・領収書・契約書・見積書などに関する電子データを送付・受領した場合には、一定の要件を満たした形で電子データを保存する必要があり、受け取った場合だけでなく送った場合も保存が必要と説明されています。

要件には改ざんを防ぐための措置や、日付・金額・取引先で検索できるようにすることが含まれます。専用のシステムがなくても、ファイル名を「日付_金額_取引先」のように規則的に付けて特定のフォルダにまとめる方法も示されています。Excelで運用を続ける場合も、送った見積書の保存の仕方を社内で決めておきましょう。詳しい要件は国税庁の電子帳簿保存法関係のページで確認できます。

システム化の前に整理しておく3つのこと

「ツールを入れれば解決する」という発想のままでは、導入後に「かえって使いにくい」と言われ、元の運用に戻る失敗を招きがちです。次の3点を先に整理しておくと、移行が進めやすくなります。

1つ目は、標準仕様と単価の整理です。標準仕様・推奨オプション・個別対応の3段階で仕様を整理し、それぞれの単価や算出のルールを書き出します。担当者の頭の中にしかない価格の決め方を書き出す作業が、システム化の土台になります。

2つ目は、見積の段階の定義です。概算見積(初回の商談)、提案見積(プランの確定の前後)、確定見積(契約時)、変更見積(仕様の変更時)では、求められる精度と作成の速さが異なります。誰が・いつ・どの粒度で入力するかを段階ごとに決めておきます。

3つ目は、ほかの書類との連動の範囲です。見積だけをシステムにするか、仕様書・提案書・議事録まで連動させるかで、必要な機能は変わります。いま最も手間を取られている書類を洗い出し、どこまで連動させるかを先に決めましょう。比較するときの観点と料金の考え方は、新築住宅の仕様決め・見積システムの選び方で詳しく解説しています。

Excelから移行する手順

一度に全社で切り替えようとすると現場の負担が大きく、反発も起きやすくなります。次の3段階で進めると、現場の納得を得ながら定着させられます。

図2 Excelから移行する3つの段階

段階1

対象を絞って試す

1つの商品シリーズ・新規案件だけ

段階2

運用のルールを書く

入力の時期・担当・確認の手順

段階3

効果を比べて広げる

作成時間・修正回数・手戻り

数字で効果を確かめてから対象を広げる

まず、1つの商品シリーズや新規の案件だけなど、対象を絞って試験的に使い始めます。Excelの単価の一覧は、最もよく使う商品から順に移し、すべてを一度に移そうとしないことが大切です。進行中の案件は、引き渡しまでExcelのまま進めたほうが混乱しません。

次に、入力の時期・担当・確認の手順を書き出し、誰が担当しても同じ品質で回せる状態をつくります。最後に、先ほど試算した見積の作成時間・修正の回数・手戻りの件数を導入の前後で比べ、効果を確かめてから対象を広げていきます。

よくある質問

Excelのまま見積を続けてもよいのはどんな会社ですか?

見積を作る人が少なく、仕様の変更も多くない会社であれば、単価の一覧を1つにまとめ、ファイルの付け方と保存場所を決めるだけで十分に回ることがあります。担当者が増える予定がある、仕様の変更が多い、施主様とのやり取りで最新の内容を共有したいといった事情が出てきたら、切り替えを考える時期です。

いま使っているExcelの単価や仕様のデータは、システムでも使えますか?

多くの場合、商品名・品番・単価などを整理した一覧があれば、それをもとに登録できます。ただし、担当者ごとに表記や単位がばらばらなままでは移せないため、移行の前に表記をそろえる作業が必要です。どの形式で取り込めるか、登録を代行してもらえるかは、検討しているシステムの提供会社に確認しましょう。

移行にはどのくらいの期間がかかりますか?

登録する商品の数や、標準仕様がどこまで整理できているかで大きく変わります。標準仕様と単価の一覧がそろっていれば、1つの商品シリーズから試すことで早く使い始められます。期間を短くするには、先に標準仕様と単価の整理を済ませ、最もよく使う商品から登録することが近道です。

まとめ

Excel見積は手軽に始められる反面、棟数の増加・仕様の変更・関わる人の増加にともなって、版の管理・書類の連動・属人化の限界が表に出てきます。まずはExcelのままでできる改善を試し、それでも残る困りごとが業務の中心にあるなら、システムへの切り替えを考える時期です。

切り替えの判断は、続けた場合の手間を自社の記録で試算して行います。メールで送る見積書の電子データの保存の決まりも押さえたうえで、標準仕様と単価を整理し、対象を絞って試してから広げていきましょう。

仕様から見積書までをつなぐ「イエプロ」

Excelでの運用の限界は、仕様と見積が別々に管理されていることから生じます。イエプロは、仕様決めの画面で選んだ商品やオプションをもとに見積書・オリジナルデータシート・仕様書を自動で作成します。壁紙や床材などは単価と数量から金額が計算されるため、書類ごとに転記し直す作業がなくなります。

打ち合わせの内容や変更の履歴、担当者のメモも保存できるので、最新版を探す手間もかかりません。自社の住宅仕様の登録は代行にも対応しています。Excelからの切り替えを検討している方は、まずは資料請求(無料)からご確認ください。

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